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西安現地情報局

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秦の始皇帝と兵馬俑


 秦は農業を発展させ、国の経済を豊かにすると、軍事力を強化しました。その巨大な軍事力を背景に、斎、楚、魏、燕、韓、趙の六カ国を滅亡させ、とうとう中国全土を統一したのです。始皇帝は紀元前221年、自ら皇帝になると郡県制を施行して中央集権化を図りました。その後、焚書坑儒による思想統制や度量衡、文字、貨幣の統一、万里の長城の増改築などを行いました。

 始皇帝は文武両道で世を治めることを推し進めると共に、自ら庶民生活を視察するため、幾度に渡り全国各地を巡行しました。紀元前210年、最後の巡行中に亡くなり、今の陝西省潼県に埋葬されました。ちょうど50歳の時でした。

 秦の始皇帝は生前、不老不死のために神仙道や医方術を求める一方、実は「人間はいつか死ぬ」という自然の法則も知っていました。そこで、自らの為に陵の建造に着手しました。それが驪山の北麓にある始皇帝陵墓です。陵の前は川に面し、後ろに山を背負い、風水学から言えばとても良い所です。陵は内城と外城に分かれていますが、現在、地上の建築物は跡形もありません。陵墓が完成した当時、高さ120メートル、周囲の長さは2167メートルあったと言われています。2000もの間、風雨にさらされた結果、現在の陵の高さは76メートル、周囲の長さは約2千メートルとなっています。この陵墓作りは、着工から完成まで、37年もの歳月がかかりました。

 始皇帝の陵墓は大きな高い山のように見え、その外形全体は四方円錐状の上部をカットしたような形をしています。陵墓の上部は平たく、中央には踊り場のような段差があります。始皇帝の陵墓を中心とした周囲からは、現在までに様々な遺跡や文物が発見されました。また、殉葬坑、殉葬墓や陵墓を作っている職人のお墓なども、数多く発見されています。まるで陵墓全体が、地下に眠っている大きな歴史博物館のようです。そのうち、最も重大な発見が兵馬俑坑、銅車馬坑などです。

 1974年、中国の考古学者たちは始皇帝の陵墓から東側へ1.5キロ離れた所で、大型の兵馬俑坑を三ヶ所発掘しました。その総面積は2万平方メートルにものぼり、陶俑と陶馬が8000体近くもあり、木造の戦車が100あまり、青銅製の兵器も40000件発見されました。そお見事な戦陣の構えに人々は驚嘆しました。さらに、感心させられた事は、出土した兵士の身長が実物と同じぐらいで、同じ顔をしているものが一つもないことです。それにより、秦の軍隊がさまざまな民族の混成部隊だったことも分かりました。兵馬俑は、かつて秦の敵国が存在した東方を向いて置かれていました。2千年ぶりに日の光を浴び、何も応えず、じっと立っている彼らと遭遇した人々は驚くしかありませんでした。この発掘により、それまでは文献資料でしか伝えられていなかった秦軍の装備や編成をはっきり知ることができました。

 兵馬俑の完成度は高く、一体ずつの表情や髪型が異なり、そのうえ指先や靴の底まで繊細に作られています。馬のたてがみや尾までもリアルに再現されているのを目の当たりにすると、当時千人以上いたといわれる職人のこだわりを感じます。とても紀元前に作られたとは思えない美しさと力強さにあふれています。2千年以上前に造営された広大な地下宮殿、2千年以上眠りについていた膨大な地下軍団、それらがつい最近発見されたという事に、中国の歴史の深さや驚きがあり、ロマンを感じさせます。そして、これらの精緻を極めた芸術品をみれば、古代中国における彫塑技術の高さが分かります。彫塑技術は、秦の時代にはすでに成熟していたことが理解できます。

 兵馬俑の発見は、中国国内だけではなく世界からも注目を集めており、「世界の八大奇観」や「20世紀最大の考古学的発見」と賞賛されています。秦の始皇帝および兵馬俑坑は1987年に「ユネスコ世界の文化遺産」に登録されました。兵馬俑にはまだまだ大量の未発掘部分があり、未知の部分があります。21世紀に入った現在でも、この膨大な文化財群の調査、研究は続けられています。しかし、光に当たると同時に土偶の表面に塗られた色彩が消えてしまうという理由から、発掘は控えられています。

※この記事は、中国人ガイドさんに教わった話です。


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